インド ダージリン1 ダージリンへ

  この投稿は1999年から2001年までのバックパックを背負って世界を放浪した話を書いてます

紅茶のおいしい ダージリン♪♪ 夢の中に出てきただけで

その登場人物を好きになってしまうというなんとも不可解な恋を

したことがないだろうか?自分はある 昔々 柏原よしえ(芳江)が

夢に出てきて 朝からポーっとなってしまった 彼女の代表曲

”ハローグッパイ”(替え歌)がダージリンへ向けて走る夜行列車の中

頭の中でリフレインしていた

 インドに来て毎日チャイを飲むうち本場の紅茶を嗜んでみようと

思い立ったのだ 紅茶=ダージリンという簡単な方程式だ

 ひとまずカルカッタ ハウラー駅からニュージャルパイグリ駅

(以後NJP)まで列車で移動する

 夜のハウラー駅は昼と変わらず出発や到着 又駅構内で働く

人々でごった返している 荷物を持ってウロウロ行きかう人々の中を

ポーターがフットワーク良く荷物を器用に頭に乗せ縫うように通り

過ぎていく 乗り換えの待ち時間なのだろう山のような荷物を

マクラ変わりに親子らしき人達がうつらうつらしている

チャイ屋の屋台には出発を待つ人だろうか 到着を待っている人

だろうか数人がしゃがんでチャイを飲みながら行き行く人々を

無表情で眺めている ストリートチルドレンは施しをもらおうと

あたりをせわしなく徘徊し ノラ犬は残飯探しに鼻をひくつかせている

 やっぱりぼんやりしたオレンジ色の灯りの下にそれぞれの姿を

映し出しては消えてゆく 夜のせいか人々はもちろん犬まで疲れて

いるようで表情は暗い

 日ごろ仕事帰りに酒臭い車両に乗っていると意識は薄れるが

昔から夜の駅は哀愁を感じてしまう Mっ気がそうさせるのか

Sっ気がそうするのか旅の出発はよく夜を選んだ そのたびに

心の奥底からユラリ舞いだす得体の知れない澱(オリ)が心の

静寂をにごらせ なぜかワクワクもする

 雑踏と喧騒で気づかないうちに滑り込んできた列車にあわてて

自分の名前を探す(長距離列車は乗る車両に名前が張り出されてる)

 車両は1等車2等車と分かれており当然のごとく2等車のチケットだった

無事名前を確認し車両に乗り込む 席はLower ,Middle ,Upperと

なっていて人に勧められるままUpper席を取っていた Upperは通常の

席の上に常設してある寝台席だ 通路側にある階段であがりこみ

胡坐をかくと天井につきそうな席だが快適なパーソナルスペースだった

思えば常に人々と密着していたのだからタタミ1畳ほどの広さでも

贅沢な気分になる バックパックをマクラに横になると 何の知らせも

無しに列車がそれぞれの目的地に向けて動き出した 難なく出発できた

安堵で自然と鼻歌がこぼれてしまう フーフフ フンフンフーフフン♪♪

 灯りが少しずつ無くなっていく車窓を眺めながら幼少のころ

2段ベッドの上段で寝ていたことを思い出す 何故かベッドをヨットに

見立てて大海原を航海するイメージを沸かせていた 特に台風の夜や

風の強い日などはブランケットをかぶりながら心を弾ませたものだった

 旅をその当時から夢見ていたことに気づき夜も手伝ってか感傷的に

なってしまう

 列車の揺れに体をすっかり任せていると車掌らしきオッサンがチケットの

確認に来る   と同時に何事か偉そうに早口で聞いてくる 頭の中も

すっかり列車の揺れに任せていたので内容がまったく分からないまま

揺れに任せてうなずく すると 『ベジ オア ノーベジ?』と聞こえる

これはもしかしてメシのことでメシ付なのか?!『NO Veg!』と

キッパリ答え 相変わらずベンガル語訛りの英語は聞き取りにくい

(どこもだけど)と全面向こうに非があることにして車窓に映るLower席の

インド人家族(だろう)を眺めていた どのくらい経っただろう メシをトレイ

にのせて運ばれてきた チキンカリーにサブジ チャパティー ビスケット

にヨレヨレのビニールパックの牛乳だった 牛乳パックは0.02㎜ほどの

うすうすで ササくれた指先で触れようなんざ すぐ破けてしまいそうで

持てばスライムみたいなビニールパックだった 飲み口やストロー

というような生易しさはなく皆ハジを歯で破ってチューチュー吸っていた

1度吸ったら2度と置くことのできないスライム牛乳に四苦八苦だったが

カリーはインド滞在中においてベスト10に入る旨さだった

カリーの旨さに嬉々として右手をねぶりながら食べていると 向かいの

インド人がジーっと見つめている そう このメシは別途料金であり

車内食を食べている人は極一部だった(Rs.80)この熱視線が無かったら

ベスト5に入ってただろう

 外が真っ暗になっても車両内は絶えずガサガサしていたが そんな音

にも慣れていつの間にか眠ってしまっていた

 インド人の夜と朝の境目はいつなのだろう 早朝と呼ぶには

早すぎるような時間に耳と脳をツンざく歌声で起こされた

 世界で『マトリックス』が話題興奮をさらっている時

インドでは『クチュクチュ ホタヘ』(1998年作品)が大ヒットロングラン

していた その主題歌を幼い女の子(推定6歳)が熱唱し男の子(推定8歳)

がチップを要求して車内を練り歩いていた 日本人にとっては聴きなれない

波長で鼓膜を引っ掻き 寝ていた脳ミソにレモンを絞ってくれる

 きっとうまいのだろうが寝起きに大量にスパイスを効かせたカレーは

キツイ    そんな風に思う

 熱唱する子供がいなくなると列車は一定のリズムを繰り返しながら

頭の中では『クチュクチュホタヘ』が一定のリズムで繰り返していた

 そのままボーっとしていたらしだいに駅と駅の間隔が短くなっていく

停車するたびに売り子が独特な発声をあげて行ったり来たりする中

騒がしく人々が入れ替わっていく すると一気に朝が始まった

 上からその光景を眺めながらも とりあえずの目的地

NJP駅まではまだまだ時間がかかるのだった

 旅のオマメ

 Lower….普通のBox席 日本より低め

 Middle…夜になるとLowerの席の背もたれのところが吊られベッドになる このシートの人はベッドになるまでLowerの席にいる

 クチュクチュホタヘ….インド映画 カジョール シャールクカーン(小西博之似)主演

 サブジ…….野菜のスパイス(煮)炒め

 チャパティー…アーターとよばれる全粒粉と水でこねて発酵させずにクレープ状に焼いたもの

 

2010-02-14 | Posted in ISHIKAWA旅日記Comments Closed