インド プリー3 カメラマン

 この投稿は1999年から2001年までのバックパックを背負って世界を放浪した話を書いてます

 天井のファンのモーター音で目が覚める まだ朝の8時過ぎ

昨日の陽気な兄ちゃん夫婦との待ち合わせまで まだ充分に時間がある

鉄格子から見える外の景色は今日も紫外線は強そうだ そんな今日は

洗濯日和でもある インドの宿にはどんな安宿でも扇風機の他にバケツが

1つ備えてある 用途はそれぞれ自由だが旅人の共通の用途に”洗濯用”

がある バケツに水を汲み粉洗剤 「サーフ 」を溶かし混ぜる 

今は穿いているトランクス以外(我がヘインズ3枚 ペラペラのズボン 短パン

トランクス2枚 靴下3足)をバケツに放り込み暫く漬け置き そして

ジャブジャブ洗う するとどうだろう サーフ入りのバケツの水があれよあれよ

ネズミ色に変わっていく どこからそんな汚れの色素が出ているのか

判らないが お陰で我がヘインズはまだ白いままだった

 中庭にロープが張ってある パンツ1丁で洗濯物を干す 体も太陽を

浴び全身ジリジリ焼けていくのをヒシヒシ感じ風で揺れるヘインズの間

から直射日光で目が眩しくてしょうがない 我がメラニン色素は本日も

増殖に忙しい 中庭の対面には外国のネーチャンも濡れた髪をまとめ

巻きスカートにタンクトップ姿で洗濯物を干している 眺めるには

もってこいだ 座りながらボケッとしていると短パンを残してあっという間に

洗濯物は乾いていく ヘインズを首に通すとサーフの香りがして心も

清々しくしてくれる ペロペロのズボンを穿き 今日はパスポートと

トラベラーチェックはバックパックの奥底にいれハラマキ貴重品を巻き

外へ繰り出す 昨日は南に行ったので 今日は北へとベンガル湾沿い

をブラブラする 歩いた先に集落があり 時よりする魚臭い風は

どうやらこのあたりから運んでくるようだった 浜辺から興味本位に

集落に踏み入ると まぁ人懐こいというか好奇心というか子供達が

(推定4~10歳の男女)がキャッキャと後ろからついてくる と

突然大の大人が”アチョー” と香港映画のカンフーらしきポーズで

横からカットイン 黄色人種が旅をしているのは日本人でジャッキーチェン

もブルースリーも日本人だと思い込んでいる外国人は意外と多い

日本人→”アチョー”→喜んでくれる という陽気な外国人が

日本人に対する親しみのコミュニケーションの方程式だと旅をして

思った なんだかんだ相手にしていたら”アチョーのオッサン”が

ベンガル語訛りの巻き舌の英語で『家に来い!』 と言う 一瞬ペロペロの

ズボンの中の貴重品(現金 カード類)を思ったがなんだか面白そう

なのでホイホイついて行った 子供達もワイワイついてくる

 ここだ!と案内された家はバナナの葉で(たぶん)造った屋根に

外壁は土で出来たものだった 竹で編んだ扉を開けおじゃまする

内壁は竹で編んだ骨組みが所々見える 2間 中は薄暗い

意外にヒンヤリしている 渡辺篤史ならこの家をどう表現しただろう、、

アチョーのオッサンが奥にいる奥さんに何やら大声を出している

2間なのでそんな大声はいらないだろうと思いながら 外国人

(自分)の訪問にテンションがあがったのかもしれない 後ろを

ついてきた子供の何人かが既に家の中に居た 家族なのか

判らないが皆仲がよさそうだ(顔は似ているんだか似てないんだか

判らない) 今日は”陽気な兄ちゃん夫婦”の為カメラを携帯している

のですかさずバックからカメラを取り出すとアチョーのオッサンの

テンションはMAXだ 俺だ!(オッサン)僕だ!私だ!とカメラ越し

がやたらワーワーしている だけどファインダーを覗き『SMILE!』

というとピタっと動きを止めて真顔になるのは 申し訳ない 笑ってしまった

『ONE MORE!』 とカメラから顔を上げると又 ワーワーしている 

家族みんなで撮ろうとしても奥に居た奥さんは恥ずかしいのか結局

カメラの前には立とうとしなかった その内アチョーのオッサンが

この自分(イシカワ)を撮ってくれるという まぁ旅に出て人や景色を

撮るばかりであまり自分の写真がないのでお願いすることにした

 しかしカメラをあまり扱ったことが無い人にカメラを持たすと

どうしてこう雑に扱うのだろう、、、旅をして思ったことだが 行った

先々の人々のシャッターを押す力は一様に力強かった

子供と一緒に撮ってもらう 一通りの撮影大会が終わると奥さんが

カリーを運んでくる 太陽はすっかり南に上がったのだろう 昼飯の

時間になっていた 土間にゴザを敷き 皆車座になって昼飯をとる

 薄い黄色いルーに何かの魚の切り身が入ったカリー(野菜なし)に

ライスだった 器用に右手で捏ねて皆モクモクと食事をする 自分は

まだ巧く右手で食事が出来ない おぼつかない様子を見て子供達は

クスクス笑いながら食事を取っている アチョーのオッサンは家長らしく

食べ方のレクチャーを威厳よくしてくれる その間奥さんといえば

奥の部屋からジーっと見つめている そのせいだろう 緊張で

我が味覚を鈍らせあまり味がしなかった 今思えば自分の食べた

カリーは奥さんの分だったのかもしれない 我がヘインズにカリーの

シミを付け アチョーのオッサンは『写真をくれ!』としつこく催促する中

家をおいとまする 陽気な兄ちゃん夫婦との待ち合わせの時間が

迫っていたのだ 陽気な兄ちゃんが待っていると思い 急いで待ち合わせ

の浜辺まで行くと2人はまだ来ていなかった ボケっとジリジリの太陽の

下で待つのは大変なので浜辺のバーみたいなコテージで時間を

潰すことにする チャイではなくコーヒーwithミルクwith砂糖ドッサリ

これまた意外に旨い! 潮風に合う(たぶん)コーヒーだった

 約束した時間オーバー30分ぐらいにヒョコヒョコ夫婦はやって来た

アジアを旅して思ったのだが訪れた国の人々はほとんど時計を

してなかった 時間は~頃で充分なのだろう 勿論陽気な兄ちゃんは

腕時計をしていない 陽気な兄ちゃんは悪びれることなく嬉々として

再会を喜び奥さんは後ろでジっとしている キッカリな時間配分に

つくづく日本人なのだなぁ、、、とそんな自分が少しだけ残念にも思えた

 その後2人の為のカメラマンとなり写真を撮る シャッターを押しても

陽気な兄ちゃんは陽気なままだった 腕を肩にに抱かれた奥さんの

はにかんだ笑顔が見れて嬉しい サプライズに隠し持っていた

ポラロイドに2人を驚かせ陽気な兄ちゃんは嬉々として踊りながら

嬉しさを表現していた 浜辺のヤシ売りのオバチャンを陽気な兄ちゃん

が呼び止め ヤシの実ジュースをご馳走になる

 子供の頃 ハクション大魔王”のハンバーグを食べたいと思っていた

ソレと同じくらいヤシの実のジュースを飲んでみたかったか、、

思わぬ夢にの実現にこちらも嬉々として小躍りする

飲む  青い柿を絞って水で薄くしたような味 

夢は夢のまま持ち続ける方がよい場合もある 

あからさまにテンションを下げることが出来ず 曖昧な顔のまま

ヤシの実のお礼をして 『又 明日!』と言うと 陽気な兄ちゃん夫婦

は明日出発と言うのだ 今撮った写真は何だったのだろうか、、、

結局住所を書いてもらいそれでも明日又ここに来ることを約束して

別れた そこからすっ飛ぶ先は駅前にあったフォトショップだった

 期待と意外だったが写真は何時間後かに出来ると言う 

なら 明日取りに行って渡すことが出来る なんだか興奮醒めあらぬ

まま宿に戻ると 中庭でパリパリになった短パンが夜風にユラユラ

していたのでした

 旅のオマメ

 サーフ…….surf ユニリーバイギリスの洗剤

 アチョーのオッサン…..ホリケンみたいなノリの人

 渡辺篤史……..建もの探訪の人

 ハクション大魔王のハンバーグ….何故か焼くというより油で揚げてあるというハンバーグだった しかもコロッケ並みなサイズ

2010-03-18 | Posted in ISHIKAWA旅日記Comments Closed