インド ダラムサラ 3 謁見

 この投稿は1999年から2001年までのバックパックを背負って世界を放浪した話を書いてます

 朝 外へ出ると旅に出て初めての天気であった

空には今まで見て感じてきた心も体も焦がすような太陽光線は 自分にも

ダラムサラの山々一帯にも射すことは無く ただただ暗い雲が低くたちこめていた

何処からかやってくるストロングな風が我がクセ毛を掻き乱し 『不吉』という

文字が浮び心も掻き乱す よりによって この日に、、、、、、

トイレに向かう階段から見える山の稜線に架かる雲を見て思っていた

、、、、、、、、、、

 頭に巻いているバンダナをきつく巻きなおし神妙な面持ちで チーズケーキ

みたいな形の部屋を出る 前日は旅人の髪をブレーズにして 宿に夜中に

帰って来たが興奮よりも寝坊してはいけないという緊張が神経をチクチク

刺激して浅い眠りのまま朝をむかえていた

 坂を上がりT字路にゴミを食んでいる牛を横目に左折して坂を下る

すると旅人やチベット人も同じ方向へと歩いていく

 今日はダライラマ14世との謁見の日だ

ダライラマの住むパレスに着くとボディチェックとパスポートチェックを受ける

門を抜け中庭に入る 中庭は既にザワザワ混んでいた 格好が綺麗な

欧米系の人達のなかにカターを持った人の他に 紙とペンを持った輩までいる

、、、、そんなのアリ? いぶかしんだまま 人々で詰まっていく中庭へと

押されるように歩いていく チベット人とそうでない人達とで割かれ 

バスケットコート2面程の中庭は人々でいっぱいになっていく

 先日ダライラマオフィスで謁見の手続きの際に紙の切れ端を貰っていた

10番台のシリアルナンバーがスタンプされたその紙の切れ端は 手の中で

ヨレヨレとなっていたが きっと謁見の順番だろうと大事にしていた

時間が経つごとに手の汗でヨレヨレになっていく 早く呼ばれないかと

背の高い外国人達に囲まれながらアゴを上げ空を見ていた

空は相変わらず暗く低い 風は時折ストロングにチベットの旗をたなびかせている

何処からか落ちてきた雨が風にあおられ頬にあたる よりによってこの日に、、、

、、、

 神がかるというのはこういうことなのだろう ドラマチックな展開というのは

こういうこともあるのだろう

 そろそろダライラマがパレスから現れるのではと 肌で感じていた時だ

時折我がクセ毛を掻き乱す風が止み さっきまで暗く低くたちこめていた雲の

間から1すじ2すじとサーチライトのように光が差し込んできた 人々のオオーッ

というの歓声があちこちから沸き起こる 天使のハシゴが下りてくるたびに 

人々のテンションが上がり歓声が増してくる 

 そして歓声が一段と高くなった

ダライラマ14世が現れたようだった、、でっかい外国人に囲まれて見えない、、

、、、、、  

 旅の舞台装置といいキューを出すタイミングといい「旅の神様」の演出はまさに

”神業”であった 又生き神様に謁見するということはこうまで劇的なのだろうか

自分自身テンションが高くなる というより 興奮で静かに震えていた

場の空気が変わるのが分かる

手に持っている紙は汗でシワシワだ

10番台なのでこのでっかい外国人たちをすり抜けなければならない

チベット人達が先に謁見しているようだった 緊張が高まる この日の為に

ヒゲの伊藤さんに話したい言葉を英語に訳してもらっていた 頭の中で反芻する

手に持っている紙は汗でヨボヨボだ

 人々の塊が少しずつ動いていく

手に持っている紙は汗でボロボロだ

 何処かしらに一縷の列が出来ていた 蛇行して長くつながっていく

番号を呼ばれる気配なし、、、、、

手に持っている朽ちかけた紙をジッとみる これは何??

 もう別によい! 素直に列に並ぶ 遠くに臙脂色をした袈裟が見える

リンポチェだ!!(高僧) 長い列が1歩又1歩進むごとに袈裟を着た数人の

リンポチェが見えてきた 実はこの日に至る前に旅人というかカメラマンというか

ミュージシャンといか 肩書きが双肩からこぼれそうな色々やってる人と

知り合っていた その人は”謁見の光景をカメラに収める”のだという

彼にダライラマとの2ショットとお願いしておいた そんな彼が向こうに見える

”頼んだぞ!!!”アイコンタクトで自分の所在をアピールする

 列がスムーズに進む リンポチェの間からダライラマ14世が見える

列がスムーズに進む 目の前にリンポチェの1人と目が合った 列が進む

ダライラマ14世が目の前にいた あれだけ頭の中で反芻していた言葉が

すっ飛ぶ、、、、、、、、、、

ダライラマの前に立った とっさに両手を出し握手する

タシデレ』 あれだけ反芻していた言葉の変わりに何故かこの言葉が出てきた

『タシデレ』 ヘソの下に響く言葉が返ってくる

で それだけ      そう それだけ 

握手した手はスルリ抜け ダライラマは列の後ろの人と握手している

隣のリンポチェから赤いヒモを頂き 謁見終了~   そう それだけ

ボーッとしながら小さい集団となった中の一塊に知っている旅仲間がいる

吸い寄せられるようにその輪の中に入る ”すごいオーラを感じた”という人がいる

”うなずきながら 話を聞いてくれた”と泣きながらいう女の子がいる

”なかなか握手をはなさなかったら隣のリンポチェに怒られたわー”と笑いながら

いう人がいる ”あっという間だったな”という男性がいる ”こんなもんなのね、、”

という人がいる、、、、けど みんな良い顔している

自分はというと 握手した手の残触を感じながら幼少の頃よく風邪をひた時

診察してくれた爺ちゃん先生のザラリとした乾いた手の感触を思い出していた

あっという間の出来事でも ダラムサラに来てよかった 

ダライラマに逢えてよかった 偽り無い事実だ ヒシヒシと感じていた

集団の中にヒゲの伊藤さん メガネの永井さんもいる 『赤いヒモを何処に

つけるか』という話題でパレスを後に旅人達とメシを食べていてもその話題は

いつまでもいつまでも尽きない

 旅のオマメ

 ブレーズ…..細かくみつ編みしたヘアスタイル

 カター……チベット文化圏では縦長のスカーフを挨拶しながら相手に渡す習慣がある ”誠心誠意 心から敬意を表しています” という挨拶のしるし カターの「カ」は口で「ター」は布あるいは印の意味 白色のカターが主

 タシデレ…..チベット語の挨拶 祝福を意味する

 赤いヒモ…..ダライラマ自らがブレッシングしたヒモ 結局首に巻いていた 数年後農業中に失くしてしまった

2010-11-06 | Posted in ISHIKAWA旅日記Comments Closed