パキスタン ギルギット1 ギルギットへ

この投稿は1999年から2001年までのバックパックを背負って世界を放浪した話を書いてます

 コースターはつづら折に身体を左右に揺らしながら北へと進路をとっていた

体調も回復し昼過ぎに出発したコースターは我々4人一行を乗せて次の街

ギルギットを目指している コースターとはハイエース的な乗り物で 

我々4人の他はパキスタンの大男 老若男達とで肩をすぼめる様に

寄せ合っている パキスタンの大男達は日本人に比べかなりでかい

肩を寄せ合ってマジマジ見る手がすこぶるデカく 膝を折っている膝小僧が

自分の倍近く高い

 小刻みに揺れる車内になんともいえない香ばしく湿ったほのか、、というより

多少キツイかほりが山吹色の点線でアラベスク模様を描き我が鼻腔の神経

を不愉快に刺激する 眉根を寄せながらもアラベスク模様を嗅ぎ取っていき

首を後ろに向けると1人のオッサンが靴を脱いでいた オッサンの靴下

が濃い山吹色のスモッグで霞んでいる様に見える

箱根の大涌谷に噴出する硫黄を想像する、、、

コースターがかっ飛ばす路は徐々に細くなり車窓から見える景色は緑が

段々近くなる いい風景 しかし臭い

『目に青葉 山吹色の 車中かな』    りょじん

 それでも暫くすると匂いにも慣れボーっとコースターの揺れに身を任せている

時だった 突然 ”パン” と乾いた音が我が鼓膜をつんざく すると同時に

パキスタンの大男達は一斉に身を窮屈そうに屈ませるのだった 自分はというと

ポカンとその光景をただキョロキョロ見回すのだった 車窓から数人の子供達が

岩の上で笑っている姿をとらえ通り過ぎて行く どうやら 身を屈めた大男達は

銃声と思い 岩の上のガキ達は火薬でイタズラをしたのだった

安堵した大男達の真剣な姿を見て 改めて(初めて)ここは山賊が出るルート

なのだと実感する 実際ここら辺は山賊が出没して誰彼かまわず襲うらしい

と聞いていた やばい所に来た、、と全身にネットリとした汗が浮びだす

我々4人は ”これはやばいかも、、”お互いの顔を見合わせる

なんとも緊張した面持ちで時間が過ぎていくと 陽が山に落ちていく

陽が落ちると車窓の向こうの山の稜線が濃く浮かび上がり 空は陽の

名残なのか夜はまだ薄い すると 路肩の無い路の真ん中でコースターが

急に停車する 一瞬 ”山賊!?” と再びネットリした汗が浮き出す

大男達がドカドカ降りていく サラート(礼拝)の時間だった 礼拝を見るのは

これが初めてではないが ”こんな時にもするのだな、、、”と思う

”イスラムは生活の中を支配している”とも思った ”礼拝している向こうに

メッカがあるのだな、、”ともボンヤリ思っていた

真剣と好奇心との間を埋める大義名分が浮ばなく 礼拝の姿をカメラに収める

事が出来ず 又まじまじ見ているのも憚れる思いがしたのでその辺をウロウロ

する 山の中だけあってエンジンを切ると人工的な雑音が無い中 川の流れる

音がする 木々を抜けると 川が路を平行に流れている 聞けばインダス川

だという 川べりに立って遥か昔我がボウズ頭が目にしっくりしていない頃歴史

で習ったインダス文明とリンクする 太古に栄えた文明の上流にいるのだと

思うと さして大きくも無い目の前の川の世界観が遺跡のように広がるのだった

残照のせいなのか月明かりのせいなのか夜のとばりが降り始めてきても

空は蒼い 川は灰色に青のフィルターをかけたようだった 

青の静寂に包まれたなんともいえない時だった

 礼拝が終わりコースターは再び北を目指す すると更に木々に覆われ

路は狭くなり山を縫っていく ヘッドライトはもう遠くを照らさない 山の奥行き

を感じる 

 どのくらいたった頃だろうか再びコースターが止まると 晩メシのようだった

ここが村の中のメシ屋なのか峠の一軒メシ屋なのか真っ暗な為わからない

屋外で食べるようでコースターのヘッドライトとメシ屋のランプの灯りで

ボンヤリ見える縄で編んだベッドに腰掛けメシを頬張る 

縄のベッドに寝転んで夜空を仰ぎ見る 

周りの山が深く 夜が濃く 星が近く 日本が遠い 自分が小さく思う

 旅のオマメ

 箱根の大涌谷….観光用に硫黄や噴煙を見ることができる ここの地熱で作られた玉子 『黒玉子』が有名 1個食べると寿命が7年延びると観光客に人気

 山賊….金品を持っていくだけだが時に命もとる と聞いていた 過激派の残党兵やらと聞く

 サラート(礼拝)…..1日5回 暁 正午 午後 日没直後 就寝前メッカに向いて行なう 街中にいるとアザーン(礼拝の呼びかけ)が鳴り 行う

 メッカ….サウジアラジアの都市 イスラム最大の聖地 預言者ムハンマドの生誕地 イスラム教徒なら一生に1度は巡礼する場所

 

2011-06-04 | Posted in ISHIKAWA旅日記Comments Closed